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東京高等裁判所 昭和45年(行ケ)115号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 本願発明の特許願書添附の明細書および図面、昭和三九年二月二九日付手続補正書および昭和四一年三月二六日付手続補正書を総合すると、本願発明の要旨は、明細書の「特許請求の範囲」の欄に記載のとおり、「単結晶、特には棒状の単結晶からそのミラー面指数が0または1の数のみより成るが、しかし、それがすべて同一の数字ではないような平板を切りとり、この面を析出担体の成長面として使用することを特徴とする加熱された単結晶担体上に気相からシリコンまたはゲルマニウムの単結晶を成長させる方法」にあるものと認められ、その明細書の「発明の詳細な説明」の欄の記載によると、本願発明は、半導体単結晶からなる高純度担体を加熱下敷によつてその融点以下に加熱しながら半導体元素のハロゲンおよび水素化合物を含有する高純度ガスを分解析出させて該担体上にシリコンまたはゲルマニウムの単結晶を成長させる方法に関するものであり、従来通常用いられるような{111}面あるいは{11〓}面の半導体板で気相単結晶化が困難で高度の乱れを生ずる欠陥があつたが、本願発明は、この欠陥を克服することを課題とし、単結晶シリコンまたはゲルマニウム棒からミラー面指数が特許請求の範囲に記載の特定の数字からなるような平板を析出担体として切りとり、この面を析出担体の成長面として使用することにより、右の課題を解決し、これにより完全に乱れのない単結晶層を気相から析出せしめるという従来にない顕著な効果を奏することができるものであることを認めるに十分である。

一方、引用例によると、引用例は、本願発明の出願前頒布の刊行物であるが(この点は、原告の明らかに争わないところである。)、「気相成長させたゲルマニウムへの砒素の結合」に関する論文であり、四種類の結晶学的方位({100}{111}{211}{110}を有するゲルマニウムの種を用いて気相析出させたゲルマニウムの単結晶中の砒素の濃度、分布等を調査研究したものに止まり、前認定の本願発明の技術思想が全く開示されていないことは明らかである。

被告は、、引用例には、本願発明に示されたと同一のミラー面指数を有するゲルマニウムの種を気相析出面として用いた例が示されており、そこに示された各種の種結晶のうちから成長層の特性のよいものを選択することは技術的に何ら困難性は存しないと主張し、本願発明と同一のミラー面指数をもつゲルマニウム種結晶を気相析出面として用いた例が引用例に示されていることは前認定のとおりであるけれども、引用例に示された技術問題は、前説示のとおり、本願発明のそれとは全く異なるものであること、また、前認定のように、引用例では本願発明の析出担体と同一のミラー面指数を有する種結晶とそれ以外のものが同列に用いられていること、および前認定のとおり本願発明が顕著な効果を奏するものであることに徴すれば、被告主張のように引用例に示された各種の種結晶の中から成長層の特性のよいものを選択することが技術的に容易であるとはたやすく認め難く、この種結晶をゲルマニウム単結晶の気相析出面として利用し、完全に乱れのない単結晶を得るという本願発明の技術思想が引用例から容易に想到しうるものとは、とうてい断じ難いところといわざるをえない。したがつて、本願発明が引用例に記載の事項から容易に発明しうるものとした本件審決は、その点において、判断を誤つた違法があるというべきである。

(むすび)

三 以上のとおりであるから、その主張の点に違法があるとして本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、その理由があるものということができる。よつて、これを認容する。

(三宅正雄 杉山克彦 武居二郎)

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